2014年03月20日
生活保護1199人、入院不要でも退院せず- 受け入れ先なく、会計検査院調べ
生活保護の実施状況について会計検査院が調査したところ、2010-11年度の
医療扶助受給者で、180日を超える長期入院患者のうち、少なくとも延べ
1199人が、入院を必要としない状態に回復したにもかかわらず退院して
いないことが分かった。そのうちの過半数が、退院に至っていない理由を
受け入れ先がないためとした。検査院はこれを受け、厚生労働省に対し、
患者の病状把握や退院後の受け入れ先確保などのための施策を検討
するよう求めた。【丸山紀一朗】
医療扶助は、指定の医療機関における受給者の診療などの費用について行われ、
医療保険の加入者を除き、原則として自己負担はない。
検査院は、24都道府県の事業主体における11年度の生活保護費を主な対象に、
実地検査や関係書類の確認などを行った。その結果、主治医などが入院の継続を
不要と判断したものの、医療扶助を受け続けている長期入院患者が、少なくとも
延べ1199人いて、そのうちの過半数が「精神及び行動の障害」に分類された。
また、退院に至っていない人を入院期間別に見ると、5年以上入院している割合は
10、11年度のいずれも5割近くを占めた。さらに、退院できていない理由を見ると、
「福祉施設などへの入所が適切と考えられるが受け入れ先がない」(延べ662人)が
最も多く、次いで「適切な退院先が分からない」(同133人)、「退院に当たって導入する
介護・福祉サービスの調整ができていない」(同129人)、
「福祉施設などに受け入れが決定しているが、日程が未定」(同119人)などと続き、
退院後の受け入れ先への移行がスムーズに行われていない実態が浮き彫りになった。
■1年間で3医療機関以上に入院、1373人
このほか、11年度中に、転院するなどして延べ3医療機関以上に入院した受給者は、
少なくとも1373人いた。このうち132人は、受給者の入院が多かった8医療機関に
10回以上入退院を繰り返していた。そして、8医療機関のいずれかに1回以上入院した
人の中に、福祉事務所による転院の要否の判断が事後的に行われたり、転院の必要性を
判断した根拠が不明とされていたりした事例があった。
さらに、転院の度に、初診料や検査料など同種の診療報酬が算定されている事例も多数あった。
■向精神薬の重複処方4328人
検査院はまた、11年11月に複数の医療機関から、同成分の向精神薬などを処方された
受給者の状況を調査。不眠症治療薬の成分名「トリアゾラム」「ゾルピデム酒石酸塩」
「ブロチゾラム」などについて調べた結果、少なくとも延べ4328人に重複処方があった。
また、これらの医薬品を、添付文書に記載されている用法用量を基準に換算したところ、
このうち延べ2871人が厚労省の規定を上回る30日分超に相当する量、延べ63人が
180日分超に相当する量をそれぞれ処方されていた。
なお、最大で20医療機関から処方を受けた事例もあった。
( 2014年03月20日 16:00 )キャリアブレイン発信