2014年01月25日
業者の技能に目安を 介護保険使う住宅改修
(中日新聞 2014年1月22日)
介護保険を使った住宅のバリアフリー改修で、業者の技能の目安となる認定制度を設けようとの動きが始まった。介護保険を用いれば、18万円を上限に9割が公費から補助されるが、経験の足りない業者が多く、技能を見分ける基準もないのが実態だ。介護でも国が「施設から在宅へ」を方針とする中、業者の技能向上は急務だ。
認定制度の発足を目指すのは、NPO法人「福祉・住環境人材開発センター」(東京都渋谷区)。これまでも住宅のバリアフリー改修で研修を開いてきた。

現在、この関連では東京商工会議所が「福祉住環境コーディネーター」の検定をしている。マークシート式で建築と福祉の知識を問う試験だ。新たな認定制度は、これに上乗せする形で設計や間取り、建材の選び方など実践的な研修を実施し、技能を認定するというのが基本構想。任意の資格なので強制力はないが、業者の技能を見極める目安になる。
住宅のバリアフリー改修は、利用者によって異なる障害や生活リズムに合わせて設計・施工する必要がある。手すりの高さや位置を決めるにも、実際の使い勝手は業者の経験に左右される。相談窓口となるケアマネジャーの多くも建築は専門外で、関与には限界がある。
同センターの渡辺光子理事長は「きちんとした仕事をしなければ、業界で生き残れないという意識を育てたい」と言う。年内にも認定制度を発足させたい考えだ。
◇
この動きの背景には経験不足の業者が多い実態に、行政側が手をこまねいている現状がある。
厚生労働省の外郭団体「テクノエイド協会」が、昨年三月に公表した調査報告によると、住宅のバリアフリー改修を手掛ける業者のうち、過半数は年間の受注件数が四件以下で、経験を積めていないことが明らかになった。一方、介護保険からの給付を担う自治体も87%が業者の研修をしていないことが判明した。
報告では「住宅改修のスキルや人材が蓄積されていない」と指摘し、研修体制の構築や優良業者の公表を提言した。だが、厚労省が打ち出している案は、各自治体の判断で登録制度を設けてもらうとの措置にとどまる。業者の技能向上につながるかは定かでないため、「行政を待っていられない」(渡辺さん)と、NPOとして認定制度の構築に取り組むことにした。
介護保険が使えるサービスのうち、住宅改修は唯一、業者が満たすべき「指定基準」がない。一方、介護保険から住宅改修に支払われる支給額は二〇一二年度で四百十億円と、制度発足当初の二・六倍に達している。現状を放置すれば、チェックもないまま、使えない住宅改修のために多額の公費が無駄になりかねない。
バリアフリー改修専門の「高齢者住環境研究所」会長で、一級建築士の溝口千恵子さんは「体の弱った人間が使うのに、住宅改修の質をどこもチェックしていなかったのは大問題だ。業者の技能向上は待ったなしの課題だ」と話している。
(三浦耕喜)
介護保険を使った住宅のバリアフリー改修で、業者の技能の目安となる認定制度を設けようとの動きが始まった。介護保険を用いれば、18万円を上限に9割が公費から補助されるが、経験の足りない業者が多く、技能を見分ける基準もないのが実態だ。介護でも国が「施設から在宅へ」を方針とする中、業者の技能向上は急務だ。
認定制度の発足を目指すのは、NPO法人「福祉・住環境人材開発センター」(東京都渋谷区)。これまでも住宅のバリアフリー改修で研修を開いてきた。

現在、この関連では東京商工会議所が「福祉住環境コーディネーター」の検定をしている。マークシート式で建築と福祉の知識を問う試験だ。新たな認定制度は、これに上乗せする形で設計や間取り、建材の選び方など実践的な研修を実施し、技能を認定するというのが基本構想。任意の資格なので強制力はないが、業者の技能を見極める目安になる。
住宅のバリアフリー改修は、利用者によって異なる障害や生活リズムに合わせて設計・施工する必要がある。手すりの高さや位置を決めるにも、実際の使い勝手は業者の経験に左右される。相談窓口となるケアマネジャーの多くも建築は専門外で、関与には限界がある。
同センターの渡辺光子理事長は「きちんとした仕事をしなければ、業界で生き残れないという意識を育てたい」と言う。年内にも認定制度を発足させたい考えだ。
◇
この動きの背景には経験不足の業者が多い実態に、行政側が手をこまねいている現状がある。
厚生労働省の外郭団体「テクノエイド協会」が、昨年三月に公表した調査報告によると、住宅のバリアフリー改修を手掛ける業者のうち、過半数は年間の受注件数が四件以下で、経験を積めていないことが明らかになった。一方、介護保険からの給付を担う自治体も87%が業者の研修をしていないことが判明した。
報告では「住宅改修のスキルや人材が蓄積されていない」と指摘し、研修体制の構築や優良業者の公表を提言した。だが、厚労省が打ち出している案は、各自治体の判断で登録制度を設けてもらうとの措置にとどまる。業者の技能向上につながるかは定かでないため、「行政を待っていられない」(渡辺さん)と、NPOとして認定制度の構築に取り組むことにした。
介護保険が使えるサービスのうち、住宅改修は唯一、業者が満たすべき「指定基準」がない。一方、介護保険から住宅改修に支払われる支給額は二〇一二年度で四百十億円と、制度発足当初の二・六倍に達している。現状を放置すれば、チェックもないまま、使えない住宅改修のために多額の公費が無駄になりかねない。
バリアフリー改修専門の「高齢者住環境研究所」会長で、一級建築士の溝口千恵子さんは「体の弱った人間が使うのに、住宅改修の質をどこもチェックしていなかったのは大問題だ。業者の技能向上は待ったなしの課題だ」と話している。
(三浦耕喜)