2014年01月15日

地域と介護 「互助の絆」を結び直そう

(2014/01/09付 西日本新聞朝刊)

■2014新たな時代に■ 
 大分県中津市の「福祉の里づくりサポーター事業」には65歳以上の市民約500人が登録している。メンバーが地域の介護や給食サービスなどを支援すると1時間当たり100ポイントがもらえ、たまったポイントは翌年、100ポイントが100円で換金される仕組みだ。「地域の助け合いになるし、本人の介護予防にもなる」と市側は効果を強調している。
 事業は厚生労働省が2007年に導入した「介護支援ボランティア制度」の一環だ。この制度は全国90近い市町村に広がり、地域の活性化にも役立っているという。

 ▼制度の存続に黄信号
 日本が世界有数の長寿国になったのは喜ばしいことだ。ただし、高齢者の増加で介護が必要な人もまた、増え続けている。
 介護への住民参加が注目されるのは、地域の介護環境整備の一助になるからだ。底流には、介護を公的サービスだけで支えることが難しくなってきた事情もある
 介護保険制度が始まった00年度に約218万人だった要介護認定者数が13年度は約564万人に急増した。介護費用も膨らみ続け、00年度の約3・6兆円から25年度には6倍近い約21兆円に及ぶ見込みだ。介護保険は制度の存続に黄信号がともりつつある。
 政府が制度を見直すのはやむを得まい。15年度からは介護の必要度が低い人向けの訪問介護などの事業を市町村に移管する方針だ。
 この移管で介護サービスを低下させない努力が市町村には求められる。鍵を握るのはボランティアやNPOなどを含む地域の人材活用だ。住民同士の支え合いという「互助」の理念に基づく介護のあり方があらためて問われよう。

 血縁や地縁が薄れゆく現代社会で、しかも介護という差し迫った課題の解決に向けて、住民同士の絆を結び直す作業は、決して容易ではあるまい。
 だが、大都市圏に比べ、地方はまだ地域社会のつながりが残っているとされる。もちろん、九州もその例外ではない。住民が主導したり、行政と連携したりして、地域独自の高齢者支援活動に取り組む実践例も少なくない
 福岡県大牟田市では介護事業者や行政、市民が一体となって徘徊(はいかい)する認知症の高齢者を保護する活動を長年続けている。捜索には民間企業も参加するなど、地域ぐるみの運動として注目されている。
 福岡市も昨年末から、徘徊する認知症高齢者を早期に発見するため、メールで市民に捜索を呼び掛ける取り組みを開始した。

 このほか、高齢者世帯への配食サービス(福岡県みやこ町)▽空き店舗を活用した健康相談(同県飯塚市)▽高齢者の安否確認や買い物の代行(同県筑後市)▽ボランティアによる生活指導(長崎県佐々町)▽一人暮らしの高齢者に地域住民が声を掛けて見守る愛の一声運動(佐賀県小城市)など、多彩な活動が成果を挙げている。
 住民のボランティアは、地域の人が気軽に参加しやすく、地域の実情に応じた支援を工夫できる利点がある。住民同士の助け合いを育み、参加者自身の生きがいにつながっているとの報告も多い。
 こうした取り組みが活発化し、さらに広がるよう期待したい。

 ▼決して人ごとではない
 もちろん介護は、住民の支え合いだけで対応できるほど簡単な問題ではない。
まず本人や家族の自助努力が要る。支援の大きな柱が介護保険制度や自治体などの対策にあるのは言うまでもない。
 市町村では校区単位で介護や医療、介護予防などのサービスを一体的に担う「地域包括支援センター」の活用が鍵になる。ボランティアとの連携を進めるためにも、陣容の強化が急務だろう。
 企業社会でも家族の介護を抱える従業員の休暇取得など、対応策の改善と強化が求められる。
 そうした制度的な支援と住民の支え合いをうまく組み合わせ、地域の実情に見合った介護ニーズへの対応力を育てる必要がある。
 介護は決して人ごとではない。高齢社会の進展で誰もが介護する人、される人になりうる。
 困った人に周囲が手を差し伸べ、「ありがとう」「お互いさま」の言葉がごく普通に行き交う。そんな地域社会を目指して、知恵を絞り、努力を重ねていきたい



地域と介護 「互助の絆」を結び直そう




Posted by ふくえん at 08:30│Comments(0)業界ニュース
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。