2013年08月23日
社会保障工程案 持続可能な制度へ必要な道筋
(8月22日付・読売社説)
社会保障を持続可能な制度にするための改革は多岐にわたる。優先順位をつけて、着実に実行することが重要だ。
政府は、社会保障制度改革のプログラム法案の骨子を閣議決定した。秋の臨時国会に法案を提出する。
この法案は、政府の社会保障制度改革国民会議がまとめた報告書を踏まえ、医療、介護、年金、少子化対策の各制度改革についての内容と工程を示すものだ。
今回の改革の主眼は、主に現役世代の負担で高齢者を支えている現行の仕組みを、全世代が負担する形に変える点にある。
少子化で現役世代の負担が過重になる中、制度を維持していくには、高齢者や高所得者に、より多く負担を求めることはやむを得ない。歴代政権が避けてきた改革に取り組む姿勢は評価できる。
その一つが、70~74歳の医療費窓口負担の引き上げだ。2008年の法改正で2割と定めたが、当時の自公政権が特例として1割に据え置き、現在も続いている。
ただ、法定通りの水準に引き上げる時期については14~17年度と大きな幅を持たせている。特例措置のために投入される税金が年2000億円に上ることを考えると、早急に見直すべきだ。
介護保険では、現在は一律1割となっている利用者の自己負担率を、高所得者の場合、15年度から引き上げる。一方で、低所得高齢者の介護保険料は軽減する。
高齢者の間でも、所得の格差は大きい。高所得者の負担を増やし、低所得者の負担を減らすことは、高齢世代内の公平を図るうえで妥当と言える。
年金改革については「検討を加え、必要な措置を講じる」とするにとどまった。実施時期を明示しなかったのは、具体的な制度設計に時間がかかるからだろう。
国民会議の報告書では、高所得者の年金に対する課税の強化や、デフレ下でも賃金水準の変化に応じて年金支給額を抑制できる仕組みの導入といった改革の方向性は明記されている。
年金生活者は税の控除が大きく、同じ収入の給与所得者に比べ手取り額が多い。若い世代の負担感を軽減するためにも、高所得層への年金課税の強化は必要だ。
年金支給額の抑制は年金財政を安定させるうえで欠かせない。
こうした重要な改革の実施に見通しを立てられないようでは、年金制度の持続可能性に疑問符がつく。改革案を具体化させるため、実施時期の検討を急ぐべきだ。
(2013年8月22日01時22分 読売新聞)

社会保障を持続可能な制度にするための改革は多岐にわたる。優先順位をつけて、着実に実行することが重要だ。
政府は、社会保障制度改革のプログラム法案の骨子を閣議決定した。秋の臨時国会に法案を提出する。
この法案は、政府の社会保障制度改革国民会議がまとめた報告書を踏まえ、医療、介護、年金、少子化対策の各制度改革についての内容と工程を示すものだ。
今回の改革の主眼は、主に現役世代の負担で高齢者を支えている現行の仕組みを、全世代が負担する形に変える点にある。
少子化で現役世代の負担が過重になる中、制度を維持していくには、高齢者や高所得者に、より多く負担を求めることはやむを得ない。歴代政権が避けてきた改革に取り組む姿勢は評価できる。
その一つが、70~74歳の医療費窓口負担の引き上げだ。2008年の法改正で2割と定めたが、当時の自公政権が特例として1割に据え置き、現在も続いている。
ただ、法定通りの水準に引き上げる時期については14~17年度と大きな幅を持たせている。特例措置のために投入される税金が年2000億円に上ることを考えると、早急に見直すべきだ。
介護保険では、現在は一律1割となっている利用者の自己負担率を、高所得者の場合、15年度から引き上げる。一方で、低所得高齢者の介護保険料は軽減する。
高齢者の間でも、所得の格差は大きい。高所得者の負担を増やし、低所得者の負担を減らすことは、高齢世代内の公平を図るうえで妥当と言える。
年金改革については「検討を加え、必要な措置を講じる」とするにとどまった。実施時期を明示しなかったのは、具体的な制度設計に時間がかかるからだろう。
国民会議の報告書では、高所得者の年金に対する課税の強化や、デフレ下でも賃金水準の変化に応じて年金支給額を抑制できる仕組みの導入といった改革の方向性は明記されている。
年金生活者は税の控除が大きく、同じ収入の給与所得者に比べ手取り額が多い。若い世代の負担感を軽減するためにも、高所得層への年金課税の強化は必要だ。
年金支給額の抑制は年金財政を安定させるうえで欠かせない。
こうした重要な改革の実施に見通しを立てられないようでは、年金制度の持続可能性に疑問符がつく。改革案を具体化させるため、実施時期の検討を急ぐべきだ。
(2013年8月22日01時22分 読売新聞)

Posted by ふくえん at 08:30│Comments(0)
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