2013年06月25日

在宅高齢者支援は「介護保険だけでは足りぬ」

<セミナールポ2>在宅高齢者支援は「介護保険だけでは足りぬ」!
(CMO 2013/06/17 12:00 配信)

一般社団法人全国介護事業者協議会は、5月25日、東京都内にて全国研修会を開催し、厚生労働省老健局振興課長の朝川知昭氏が「地域包括ケアシステムの構築について」と題した講演を行った。その後半部分を紹介する。

■医療と介護の連携には、一層の環境づくりが必要
一昨年から始まったサービス付き高齢者住宅(サ高住)については、都市部を中心に数を増やし、今後も需要は衰えないのではとの見通しを述べ、サ高住に入居できない低所得者向けの住まいの確保が政策的に重要との認識を示した。また、サ高住では、外から入るサービスとの関係性があまりよくない事例があるという指摘も出てきており、「サービスの在り方についての検討を始めることも必要だろうと考えています」と朝川氏。

地域包括ケアシステムは、多職種が相互に関わり合うことで可能になるが、以前から課題として指摘されている医療と介護の連携については、環境づくりの必要性を強調した。
在宅で医療系サービスを使う場合、診療報酬と介護報酬の退院時連携の加算が処置されているので、制度的な環境はかなり整ってきています。ただ、依然として医療職とケアマネ、介護職との連携には大きな壁があり、スムーズな医療・介護連携を可能にするために、医療制度の方から取り組みを強化しています」

それが23、24年度の在宅医療連携拠点事業(25、26年度は名称を変えて継続)で、事業内容は地域ごとの医療資源や介護資源の把握、医療職と介護職が地域の在宅医療・介護の課題と解決策を検討する会議の開催、医療職とケアマネなどのグループワークなど。24年度は105カ所で実施し、中間まとめでは、医療界も連携を前向きにとらえており、「介護保険制度でもこの事業を推し進め、地域包括ケアシステムとも連携すべきだろうと考えています」。

在宅高齢者支援は「介護保険だけでは足りぬ」

在宅の高齢者を支えるには、介護サービスだけでは不十分
介護サービスではカバーできない買い物や外出などの介助。ひとり暮らしの高齢者世帯が増加し、家族の力や地域の自然な支え合いが期待できない現在、地域に意識的な生活支援サービスを作り出すことの必要性を強調。
「難しいのは、行政が直接手がけるサービスではないので、ボランティアやNPOなど住民主体の活動をいかに作り出していくか。団塊の世代が退職し始めて地域に戻ってきていますが、元気な高齢者が支え手になることを期待したい。地域で活動する場があることは元気な高齢者にとっても有用です」。

生活支援サービスの課題には、実施する地域単位の設定や採算性もある。採算ベースにのりやすい配食サービスと見守りサービスを合体させた例をあげ、「民間企業やボランティアの力を借りながら、市町村が支援する体制を考えていかないといけない」と述べた。

生活支援サービスの必要性を力説する様子からは、先日の「軽度者の介護保険外サービスの活用」の報道を連想してしまうが、それについては、「軽度者を介護保険給付以外のサービス提供の形にできないかという意見は、税と社会保障の一体改革で出てきたもので、昨年成立した社会保障改革推進法でも重点化・効率化を進めて保険給付をできるだけ抑えていくことが明記されています。それに基づいて議論している国民会議で出てきた意見で、方針が決まっている事実はありません」と語った。
また、介護予防給付の利用者が数十万人いる現在、「利用している人の支援がなくなることはない」と強調。その上で、「予防給付と地域のサービスとセットする形も考えていくことは必要ではないか」との認識を示した。

軽度者を支えるサービスの構築として朝川氏が期待を寄せるのが、24年度の制度改正で創設した介護予防・日常生活支援総合事業制度。要支援者・2次予防事業対象者を対象に、利用者の状態像や意向に応じて市町村がサービスの提供内容を判断、生活支援などを組み合わせながら訪問系、通所系のサービスを組み立て直すという事業で、24年度は27保険者が実施した。

「取り組みはさまざまで一概に評価できる状況ではありませんが、こうした取り組みが重要なのは、在宅の高齢者、とくに軽度の人を支える時に介護サービスだけでは支えていくことにならないからです。生活支援を地域で構築することを市町村が考えていかないとこれからの10年はもたない。この総合事業について市町村には前向きに考えてほしい」と述べた。

厚労省担当部局が考える地域包括ケアシステムの将来像が伝わってきた今回の講演。生活支援サービスの必要性・有効性についても納得できるものではあった。しかし、生活支援の担い手を地域住民に求め、行政がバックアップするという枠組みがあらかじめ想定されていても、肝心のサービスをどのように作り出していくのか方法論が明らかではないのは、もどかしく感じた。軽度者の予防給付の今後についても懸念が残る。

最後に、地域包括ケア以外の政策として、平成25年度から経産省と共同で行っている介護ロボットの開発支援についての紹介があった。民間企業・研究機関などがロボット機器を開発し、介護現場でモニター調査を行うこの事業は、政府の産業競争力会議でも成長戦略のひとつと位置付けられている
地域包括ケアシステムをはじめ介護政策が財源の問題に収れんしていくなか、数少ない経済性を期待できる話題で講演を締めくくったとの印象も受けた。

◎全国介護事業者協議会
http://minkaikyo.info/

【CMO編集部 土倉】




Posted by ふくえん at 08:30│Comments(0)業界ニュース
 
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