2013年05月30日

【特別寄稿】2006年から準備された「軽度者切り」・・・

【特別寄稿】2006年から準備された「軽度者切り」――「事業」と「給付」の差は?
(CMO 2013/05/22 09:00 配信)

大型連休後半の5月5日、「介護保険の『要支援』 見直し検討」(NHKニュース)、「介護保険、軽度者向けサービス見直しへ」(読売新聞)、「厚労省、『軽度』介護の分離検討 切り捨てとの批判も」(共同通信)という報道が相次いだ。

ニュースソースは、4月22日に開かれた社会保障制度改革国民会議(首相官邸、清家篤・会長)の「これまでの国民会議における議論の整理(案)(医療・介護分野)」(第10回資料1)だ。
消費税が2014年度に8%、2015年度に10%と段階的に引き上げられるが、増税分は社会保障に投入することが約束され、あわせて制度全般の見直しを行なうとして国民会議は8月をめどに提言をまとめることにしている

「整理(案)」では、介護保険について「介護サービスの重点化・効率化が求められており、骨太の方針を示す」として、1)在宅医療の充実、2)利用料の見直し、3)要支援認定者はサービスから事業に移行、4)デイサービスの「重度化予防」重点化、5)特別養護老人ホームは「中重度者」重点化、6)補足給付の見直し、などを並べている。冒頭で紹介した報道は、3)に注目したものだ。

■地域支援事業は要支援者も対象だった
だが、要支援認定者を給付からはずすという構想は、目新しいものではない。
2005年法改正で介護認定は要支援と要介護に分離され、翌年の介護報酬改定では要支援認定者が対象となる介護予防サービスは、人気の高いホームヘルプとデイサービスが月単位の定額料金(介護報酬)となり、利用量は減らされた(ついでに、福祉用具レンタルは要介護1まで利用品目が減らされた)。同時に、介護保険を財源に「地域支援事業」(市区町村事業)が新設され、認定非該当高齢者を対象に介護予防事業が実施されることになった。

2011年法改正では、「地域支援事業」に介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)が新設され、認定非該当者だけでなく、要支援認定者も対象にすることが可能になった。
介護保険制度は、介護認定で「保険事故」が認められなければサービス(法定給付)を利用する権利(受給権)を得ることができない。だが、総合事業については、市区町村の判断で要支援認定者をサービス(給付)からはずせるとしており、要支援認定者の受給権は危うい状況にある。2011年通常国会では「(サービスと総合事業に選択については)利用者の意向を最大限尊重する」との附帯決議があったが、厚生労働省は「利用者の状態像や意向に応じて、市町村(地域包括支援センター)がサービスの提供内容を判断」(みずほ情報総研株式会社『介護予防・日常生活支援総合事業の手引き』2011年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金)としており、効果は薄い。

第5期(2012~2013年度)介護保険事業計画では132保険者が介護予防・日常生活支援総合事業を予定し、すでに27保険者が実施している(5月15日、社会保障審議会介護保険部会〈山崎泰彦・部会長〉第44回資料3「市町村での体制整備・保険者機能関係」より)。なお、第44回介護保険部会では、厚生労働省老健局から「新規の要支援認定者から総合事業に移行している保険者もある」との報告があった

■「給付抑制」の効果薄い要支援者の給付額
要支援認定を受けた在宅サービス利用者は126万人で、在宅サービス利用者全体の4割を占める(厚生労働省「2011年度介護給付費実態調査の概況」より)。厚生労働省は「認定率の上昇とともに、給付費も増大している」と指摘するが、2010年度の要介護認定者への介護サービス(介護給付)7兆3,920億円に比べて、要支援認定者への介護予防サービス(予防給付)は4,290億円と給付全体の5%に過ぎず、抑制ポイントとする説得力は弱い。ちなみに、総合事業を含む地域支援事業は1,590億円だ。

※「介護予防事業」と「介護予防・日常生活支援総合事業」は介護保険を財源とする市区町村事業。
※2006年段階では「一次予防対象者」は「一般高齢者」、「二次予防対象者」は「特定高齢者」と呼ばれていた。


総合事業は「要支援と自立を行き来するような高齢者には、総合的で切れ目のないサービスを提供」とうたうが、最大の違いは“サービス提供組織”の形態だ。「給付」では指定基準を満たした事業所が介護予防サービスを提供するが、「事業」は市区町村が任意指定するNPO組織などになり、法律で定められた指定基準はない。また、「事業」でホームヘルプ・サービスやデイサービスを利用する場合、重複は認めないとして「給付」は提供されない。第44回介護保険部会では総合事業の担い手となることが期待されるNPO(農協、生協など)の組織力がアピールされたが、「給付」と「事業」の差が明らかになるのは今後になる。

いずれにしても、制度が約束した「受給権」という基本ルールの崩壊が顕在化するのは、8月に予定される国民会議の提言を受け、今秋以降に本格化する介護保険部会の検討にゆだねられる

小竹雅子(市民福祉情報オフィスハスカップ主宰)


【CMO編集部】


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Posted by ふくえん at 08:30│Comments(0)業界ニュース
 
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