2013年04月05日
<検討会構成員が語る1>今なぜ「ケアマネの質の向上」が・・・
<検討会構成員が語る1>今なぜ「ケアマネの質の向上」が問われているのか
(CMO 2013/01/21 09:00 配信)
東京都介護支援専門員研究協議会(CMAT)は、主任介護支援専門員を対象に、平成24年度第5回中規模研修「今、介護支援専門員に求められていること」を12月に開催した。
講師は厚労省「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」構成員で大正大学名誉教授の橋本泰子氏。制度の創設から介護保険に関わってきた橋本氏ならではの視点で、「今、どのような理由で、何が介護支援専門員に求められているのか」を約1時間30分にわたって語った。
■「介護支援専門員のあり方」が課題とされている背景とは
橋本氏は、まず、検討会の名称について、「なぜ、『ケアマネジャーの資質の向上』なのか。『ケアマネジメントの質の向上』ならば、制度の問題、システムの問題、ケアマネジャーの質が含まれます。その中で、なぜケアマネジャーの資質の向上が議論されているのか」と疑問を提示し、「その背景を整理したい」と語り始めた。
年金・医療・介護、そして生活保護。年々増大する社会保障費をいかに抑制するかは将来にわたっての大きな課題だ。介護保険の場合、制度が始まった2000年の給付は約3兆8000億円(1カ月支払いが遅れるので正確には11カ月分。12カ月で約4兆円と橋本氏が説明)だったのが、2012年は約8兆円に。このことが「大きな背景になっている」と橋本氏は指摘する。
「12年で倍額は大きなものですが、社会保障費はどれも増加しています。手をつけるには問題が大きすぎる年金や医療費に対し、いちばん手をつけやすいのが介護保険で、その中でも給付に大きく関与しているケアマネジャーの資質という部分に収れんして問題にされていると考えられます」。介護保険の財源を増やさないためには、保険料上げるか、給付を下げるかのいずれかだが、「いずれにしても『ケアマネジャーは給付を抑制する視点で仕事をしてもらいたい。それができないのは資質が低い』、そういう風潮を感じます」。
■「ケアマネジャー」という名称に込められた介護保険の理念
その資質が問われ、ケアマネ不要論さえも聞こえてくる昨今。では、そもそもなぜケアマネジャーという職種が誕生したのだろうか。
介護保険の創設から関わってきた橋本氏は、日本が参考にしたドイツ、日本の介護保険を参考にした韓国にはケアマネジャーが存在しないことと比較し、「ドイツ・韓国は現金給付があるのに対し、日本は現物給付です。要介護度に応じた限度額の中で適切にサービスを使ってもらうため、その支援者としてケアマネジャーが必要だったのです」。そして、ケアマネジャーという名称が決まった経緯について、次のように述べた。
「介護保険制度を作る時、『ケアマネジャー』か『ケースマネジャー』かで、議論を繰り返しました。そして、福祉の相談事例に使われていた『ケース』という言葉には、援助する人とされる人との上下関係が含まれている、使用を控えようという世界的な潮流の中で、『ケアマネジャー』という名称が決まったのです。ケアマネジャーとは、クライアント(要支援者)に対等な目線で接し、生活全体を支える仕事なのだということを熱く議論してできた職種であり、その理念が介護保険制度を作ったのだということを、皆さんに理解してほしい」
また、橋本氏は、「自立支援」という言葉の使われ方が変容していることを危惧する。
「本来自立という言葉には、依存しない自分の力で生きていくことと、自分の意思で生きていく自律という2つの概念が含まれています。そして、社会福祉法第3条にある『個人の尊厳の保持』という言葉が意味するのは、物理的な生活条件が一定水準を満たしていること、その人らしく生きることを保障することであり、社会福祉の基本的な理念です。ですが、今や介護保険は『依存するな、させるな』、それがもっとも必要なことであるようになっています。もちろんムダな給付があってはいけません。しかし、不要な抑制はしてはならないことです。介護保険とは本来そのようなものだったのではないでしょうか」。

(CMO 2013/01/21 09:00 配信)
東京都介護支援専門員研究協議会(CMAT)は、主任介護支援専門員を対象に、平成24年度第5回中規模研修「今、介護支援専門員に求められていること」を12月に開催した。
講師は厚労省「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」構成員で大正大学名誉教授の橋本泰子氏。制度の創設から介護保険に関わってきた橋本氏ならではの視点で、「今、どのような理由で、何が介護支援専門員に求められているのか」を約1時間30分にわたって語った。
■「介護支援専門員のあり方」が課題とされている背景とは
橋本氏は、まず、検討会の名称について、「なぜ、『ケアマネジャーの資質の向上』なのか。『ケアマネジメントの質の向上』ならば、制度の問題、システムの問題、ケアマネジャーの質が含まれます。その中で、なぜケアマネジャーの資質の向上が議論されているのか」と疑問を提示し、「その背景を整理したい」と語り始めた。
年金・医療・介護、そして生活保護。年々増大する社会保障費をいかに抑制するかは将来にわたっての大きな課題だ。介護保険の場合、制度が始まった2000年の給付は約3兆8000億円(1カ月支払いが遅れるので正確には11カ月分。12カ月で約4兆円と橋本氏が説明)だったのが、2012年は約8兆円に。このことが「大きな背景になっている」と橋本氏は指摘する。
「12年で倍額は大きなものですが、社会保障費はどれも増加しています。手をつけるには問題が大きすぎる年金や医療費に対し、いちばん手をつけやすいのが介護保険で、その中でも給付に大きく関与しているケアマネジャーの資質という部分に収れんして問題にされていると考えられます」。介護保険の財源を増やさないためには、保険料上げるか、給付を下げるかのいずれかだが、「いずれにしても『ケアマネジャーは給付を抑制する視点で仕事をしてもらいたい。それができないのは資質が低い』、そういう風潮を感じます」。
■「ケアマネジャー」という名称に込められた介護保険の理念
その資質が問われ、ケアマネ不要論さえも聞こえてくる昨今。では、そもそもなぜケアマネジャーという職種が誕生したのだろうか。
介護保険の創設から関わってきた橋本氏は、日本が参考にしたドイツ、日本の介護保険を参考にした韓国にはケアマネジャーが存在しないことと比較し、「ドイツ・韓国は現金給付があるのに対し、日本は現物給付です。要介護度に応じた限度額の中で適切にサービスを使ってもらうため、その支援者としてケアマネジャーが必要だったのです」。そして、ケアマネジャーという名称が決まった経緯について、次のように述べた。
「介護保険制度を作る時、『ケアマネジャー』か『ケースマネジャー』かで、議論を繰り返しました。そして、福祉の相談事例に使われていた『ケース』という言葉には、援助する人とされる人との上下関係が含まれている、使用を控えようという世界的な潮流の中で、『ケアマネジャー』という名称が決まったのです。ケアマネジャーとは、クライアント(要支援者)に対等な目線で接し、生活全体を支える仕事なのだということを熱く議論してできた職種であり、その理念が介護保険制度を作ったのだということを、皆さんに理解してほしい」
また、橋本氏は、「自立支援」という言葉の使われ方が変容していることを危惧する。
「本来自立という言葉には、依存しない自分の力で生きていくことと、自分の意思で生きていく自律という2つの概念が含まれています。そして、社会福祉法第3条にある『個人の尊厳の保持』という言葉が意味するのは、物理的な生活条件が一定水準を満たしていること、その人らしく生きることを保障することであり、社会福祉の基本的な理念です。ですが、今や介護保険は『依存するな、させるな』、それがもっとも必要なことであるようになっています。もちろんムダな給付があってはいけません。しかし、不要な抑制はしてはならないことです。介護保険とは本来そのようなものだったのではないでしょうか」。

Posted by ふくえん at 08:30│Comments(0)
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