敬老の日 高齢世代の支え合いが大切だ

ふくえん

2013年09月16日 09:30

(9月16日付・読売社説)

きょうは敬老の日。

 100歳以上で迎えたお年寄りは、5万4000人を超える。過去20年間で11倍に増えた

 日本が世界屈指の長寿国になったのは喜ばしい。高齢期をいかに実りあるものにするかを社会全体で考えねばならない。

 厚生労働省の研究会は、今年3月にまとめた報告書で、高齢者が住み慣れた地域で暮らすには、「共助、公助」と共に、「互助、自助」が必要だと指摘した。

 「共助」は介護保険などの社会保険制度に基づく相互扶助であり、「公助」は税財源による生活保護などを言う。これに対し、「互助」は近隣同士やボランティアによる助け合いを指す。公的な制度によらない支援の仕組みだ。

 高齢者同士の「互助」の取り組みが、各地で広がっていることに注目したい。

 例えば長崎県佐々町では、要介護状態になるのを防ぐ「介護予防ボランティア」が活躍する。

 ボランティアとなる住民は60歳代が中心で、まず町が開く養成講座を受講する。寝たきりや認知症の予防を目的に、集会所で開かれる教室で、高齢者に運動やレクリエーションの指導を行う。

 高齢者の自宅を訪問し、洗濯、掃除の手伝いもする。

 この結果、佐々町で要介護認定を受ける高齢者の割合が減り、介護費の削減にもつながった

 住民のボランティアが優れているのは、地縁を通じて地域の人が気軽に参加できる点である。

 ボランティア活動をしている高齢者は、認知症や要介護状態になりにくいとの報告もある。自身の生きがいにもなる。こうした活動を広げてみてはどうだろうか。

 地域社会のつながりが薄れたと言われて久しい。「互助」を促進するには、自治体の役割が鍵になる。ボランティアが活動する場の確保など、住民の助け合いを後押しする工夫が求められよう。

 65歳以上の高齢者は、ほぼ4人に1人に上る。急速な少子高齢化で、社会保障制度を支える現役世代の負担は一層重くなる。高齢者の生活を公的サービスだけで支えることが困難なのは明らかだ

 自立して生活する「自助」を実現することが望ましい。意欲と能力があれば、それに応じて社会の「支え手」になるという意識を持つことが大切である。

 高齢になっても一定の仕事を続けられるようにすることは、極めて重要な課題だ。長年培った能力を生かし、活力ある長寿社会を実現したい。

(2013年9月16日01時41分 読売新聞)



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