<セミナールポ>特養こそ介護保険から外すべき!
(CMO 2013/08/05 09:00 配信)
“軽度者”に介護保険サービスは不要なのか――。
現在、要支援者は150万人ほど。それほど多くのサービス利用者がいるなか、いま、
要支援1、2を介護保険から切り離すという意見が厚労省の社会保障審議会などであがっている。
7月19日、市民福祉情報オフィス・ハスカップは、淑徳大学コミュニティ政策学部教授の鏡 諭さんをゲストに招き、この要支援の切り離し問題についてセミナーを開催した。
■「特養を介護保険から外すべき」
介護保険について語られる際、必ず出てくるのが
「限られた財源」の問題だ。
しかし、鏡氏は、「
介護保険は給付と負担の関係で成り立っているものだが、負担を理由に給付を下げるべきではない。生活を維持するために“あるべき給付”であって、人々の生活を大きく変える可能性のある給付を操作するのは正しいとはいえない」と主張した。
とはいえ、このままでは介護保険自体の維持が難しくなるのも事実。では、何を外すべきか? 鏡氏の持論は、「特養を外すべき」。
特別養護老人ホームは、介護保険制度においては、「経済力」や「家庭環境」は問わず、要介護度のみが入所基準となっている。
ところが実際は、特養の数が限られているために、それぞれの自治体で優先入所基準を設け、選別している。つまり、保険料をちゃんと保険料を支払っているにもかかわらず、希望する施設を選べないということ。それは、「保険原理からみると、おかしくないですか?」と、鏡氏は疑問を投げかける。
■「公費負担を外すべき」
もう一つ、鏡氏が主張するのは、「公費負担を外してほしい」ということ。
介護保険は、公費と保険料、そして利用者負担で成り立っている。このうち公費とは、税金であるため、結局のところ、
「若い人たちからの再配分」だ。公費負担(4.5兆円)のおよそ7割が、就労世代が支払っているお金だという。
「介護保険でお金の話になるのは、公費が入っているから」と、鏡氏は指摘する。
ドイツでは公費は入っておらず、そのため、
「利用者、保険者、サービス事業者で話し合って内容を決めている」という。日本もそうすべき、というのが鏡氏の意見だ。
過去の措置制度を引きずっている特養を、介護保険制度に残すのなら、「規制緩和して、特養を増やすべき。しかし、そうすれば保険料は高くなる」。あるいは、「介護保険から外し、介護保険は在宅のみにすること」。鏡氏は、後者の方が現実的と言う。
そして、公費負担を、介護保険の財源から外せば、
“福祉”としての施設サービスにまわすことができる、というのが鏡氏の考えだ。
「介護保険は全体の議論をすべき時期にきている。軽度者を外す・外さないのレベルではない」(鏡氏)。
さて、ケアマネジャーである皆さんの意見はいかがだろうか。
◎市民福祉情報オフィス・ハスカップ
http://haskap.net/
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